久しぶりの更新となりました。中小企業診断士のそうむうです。
今日は、人事を行うにあたって、どのような考えで人を評価すればいいのか、そのお話をしようと思います。
どのような部下を重用し、どのような部下を遠ざければいいのか、これは永遠の課題ですよね。
今日のお話が、そんな悩める皆さんの意思決定の一助になれば幸いです。
リーダーの教科書
さて、『貞観政要』という本はご存じでしょうか?
人類の歴史上、政治の理想形が実現されたと言われた時代がありました。
中国の唐の時代、2世皇帝太宗の時代がそれで、「貞観の治」と呼ばれています。
その太宗と彼の家臣との対話をまとめたものが貞観政要です。
貞観政要は帝王学の教科書として、様々な時代の様々なリーダーに読み継がれてきました。
例えば、北条政子や徳川家康など、強固で長期にわたる安定した政権を築いた為政者たちはこの本を愛読し、自らの治世の大いなる参考としたそうです。
そして、その中には臣下を12種類にタイプ分けして分析する「六正六邪(りくせいりくじゃ)」という考え方があります
重く用いるべき部下たち
では、まず「六正」、すなわち組織の発展の大きな助けとなる部下たちについて、類型を見ていきましょう。
聖臣
まだ悪い予兆がないうちに、組織の将来の危険性を察知し、その原因を取り除いて上司の安全を保つ部下です。
上手くいっているときにも、将来の禍根となるような出来事というのは起こっているのですが、ほとんどの人にはそれが分かりません。
たいていは物事が上手くいかなくなった時に、問題が一気に噴出して、時にはすでに手遅れだったりします。
それを未然に察知してその芽を摘むような人物は組織の繁栄にとって大変重要です。
決して「上手くいっているときに水を差すようなことを言う人物」などと煙たがってはいけません。
良臣
公平な視点で善行を行い、道理をわきまえ、上司に対して礼や義を努めさせ、優れた献策を行います。上司の長所を伸ばし、短所をサポートする部下です。
上司に物申しもしますが、決して私心からではなく道義に則った意見を言ってくれる部下です。
口うるさくも感じるでしょうが、煩わしく思って遠ざけると、一気に自分の欠点を補えなくなり組織が弱体化します。
忠臣
朝早くから夜遅くまで職務に精励し、良い人材を推薦します。過去のよい事例を引き合いに出して上司を励ます部下です。
一見扱いやすい部下にも思えますが、そこに甘えて忠誠心を失うような扱いをすれば、一気に組織の要が揺らいでしまいます。
こういう部下の心をしっかり掴んで、組織の中心に据えることでチーム力が格段にアップします。
智臣
頭脳明晰で、物事の成否をしっかりと見抜き、手遅れになる前にいち早く対策を施します。ギャップや不具合を発見して埋め合わせし、トラブルの元を断ち、ピンチをチャンスに変えて上司の不安の種をいつも取り除いてくれる部下です。
こういうタイプの人は、本当にいてくれるとありがたいですよね。
活用できるかどうかは、権限委譲が鍵となります。
部下を見張ることが管理だと勘違いして、すべてをコントロールしようとすると、この手の人材の能力は活かせません。
貞臣
知識豊富で決まり事をしっかり守り、地味な仕事もしっかりとこなします。決して高い待遇を要求せず、自分に恩恵があれば人にも分け与え、慎ましい生活態度を示す部下です。
こういう人がいると組織の規律・風紀が引き締まり、周囲にも良い影響を与えます。
地味ですが組織には欠かせない人材で、こういう人を重用できるかどうかで上司の見識の度合いが分かります。
直臣
組織がピンチになった時、上司に媚を売らずあえて厳しいことを面と向かって言う部下です。
上司というのは基本的に権力を持っていますから、逆らうのはリスクがあります。
そのリスクを犯してまで組織に対して貢献しようとする心意気をどうとらえるかが分かれ目です。
反抗的だと切ったり、都合が悪いからと「評論家」のレッテルを貼ったりすると、自分にとって一番の見方を自分で失くしてしまうかもしれません。
貞観政要の大きなテーマの一つに、「部下の直言をどれだけ喜ぶことができるか」というものがあります。
「社会人たるもの、配慮有る物言いができなくては」と、自分の自尊心だけを気にした欺瞞で直言する部下を叱ったりしていないでしょうか?
上司の度量が重要
以上が、重く用いるべき大切な部下たち「六正」です。
ただ、彼ら六正も上司が正しく用いてこそ能力を発揮できますし、そのような上司の元で働きたいと願います。
上司の度量が小さく、彼らの忠言を容れられず上手く使えないとしたら、組織に有用な人材はいなくなり、やがて崩壊への道へと一直線です。
六正を見抜き、活躍させるには、上司の見識と度量が重要です。
上司という地位に甘んじるのではなく、謙虚な気持ちで日々学び考える姿勢が適切な人材運用に繋がるんですね!
次回は、決してそばに置いてはいけない!「六邪」のお話です。
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